裁量労働制とは何?指摘されている問題点をわかりやすく解説

国会での裁量労働制に関する議論がテレビなどで取り上げられることが多くなりましたが、裁量労働制とはどのようなものなのでしょうか?

今回は、裁量労働制とは何か、どのような点が問題なのかについて説明していきます。

裁量労働制とは何?

裁量労働制とは、実際に働いた時間ではなく、何時間働いたとしても事前に雇用者と取り決めた労働時間を働いたものとする制度です。

例えば、取り決めた労働時間が6時間なら、実際に働いた時間が5時間でも、7時間でも労働時間は6時間となります。

働く時間や仕事の進め方を労働者の裁量によって決めることができるため、裁量労働制と言われています。

すべての職業で裁量労働制での仕事が可能というわけではなく、日本においては一部の職業に限定されています。

裁量労働制が可能な職業とは?

裁量労働制は、働いた時間と成果が連動しないような職業に限定して導入されています。

例えば、記者や研究職、企画経営職などです。
裁量労働制が適用される職業は、大きく分けると次の2つに分類されます。

  • 専門業務型
  • 企画業務型

専門業務型の裁量労働制

専門業務型とは、専門的な業務の性質上、どのように仕事を進めるか、どのような時間配分で仕事を進めるかを労働者の裁量に任せる必要があるものです。

どのような仕事で専門業務型の裁量労働制が適用されるかは厚生労働省のホームページで確認することができます。
次のような職業が、専門型の裁量労働制の導入が可能なものの一部です。

  • 研究職
  • 記者
  • デザイナー
  • 映像プロデューサー(ディレクター)
  • コピーライター
  • 公認会計士
  • 弁護士
  • 税理士

企画業務型の裁量労働制

企画業務型とは、企業などで様々な企画の立案は、それに関する調査などを行う職業に適用できる裁量労働制です。

本社などで企業の運営そのものに深く関わるような業務内容なので、労働者の裁量に任せた業務を認める必要があります。

業務内容の他に、事業所、事業者についても指定があり、労働基準法第38条にて定められています。

裁量労働制の問題点とは何?

2018年現在、裁量労働制に関する国会での議論がメディアで取り上げられていますが、その全てが裁量労働制そのものの問題点ではありません。

例えば、与党へ問題点として指摘されているのが、裁量労働制に関するデータの信憑性です。
誤回答や集計ミスと思われるようなデータを裁量労働制の対象の拡大を進める根拠のように示してしまいました。

つまり、データの信憑性の問題と、裁量労働制の問題点は必ずしも同一ではないということです。

ただ、裁量労働制には対象職種の拡大にすぐに踏み切るべきではない問題点が指摘されているのも事実です。

裁量労働制の3つのデメリット

裁量労働制のメリットは、自分で働く時間帯や時間配分、仕事の進め方を決めることができる点です。
しかし、裁量労働制には次のようなデメリットもあります。

  • 労働時間が増える可能性がある
  • 残業代がでない
  • 運用面での問題(実際には裁量がない)

労働時間が増える可能性がある

裁量労働制は、労働者が自由に仕事を進めることができるため自由なワーキングスタイルと考えている人も少なくありません。
しかし実際には、決められた時間よりも長く働かなければいけないケースも少なくないのです。

そのため、その時間よりも常態的に長い時間の労働をしている場合には、通常よりも労働時間が増えてしまう危険性があります。

残業代がでない

裁量労働制では、あらかじめ決められた時間で賃金が支払われます。

しかし、その時間よりも長く働いたとしても残業代がでないということになります。

ただし、裁量労働制では残業代が全く発生しないというわけではありません。

裁量労働制でも残業代が発生するケース

取り決めた労働時間が1日8時間以内であれば残業代は発生しません。
しかし、8時間を超える時間を労働時間として取り決められている場合には、8時間を超えた時間分の残業代の支払いがされます。

また、裁量労働制であっても深夜の労働や法定休日の労働については割増の賃金が発生します。

運用面での問題(実際には裁量がない)

そして、本来であれば労働者の裁量に任されているはずが、実際には裁量がないような運用がなされているケースもあります。

例えば、決められた時間に電話をかけなければいけない、上司からの干渉が多いなどです。
制度自体を整備していくのと同様に、ただしく運用されるようにする工夫も必要となります。

裁量労働制とはみなし労働時間制の1つ|問題点のまとめ

裁量労働制とは、実際に働いた時間ではなく、あらかじめ取り決めた労働時間を働いたこととみなす「みなし労働時間制」の1つです。

長時間働いても一定時間分の賃金しか支払う必要がないため、企業にとって有利なワーキングスタイルとなる危険性もあります。
そのため、裁量労働制を導入できる仕事は限定されており、導入にも労使間での合意などが必要となります。

裁量労働制であっても、8時間を超えるみなし労働時間の場合には残業代が発生し、法定休日、深夜などの業務は割増賃金が発生します。

ただ、実際には労働者の裁量が制限されているケースも多く、その点が大きな問題となっています。

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