履歴書を書くときは、「どうしたら採用担当者によく見えるかな」、と考えがちですが、アピールもいき過ぎると信義則に反することもあります。
経歴詐称は意図しない場合であっても、採用の取り消し、懲戒解雇の正当な理由となることもあります。
信義則とは何か、履歴書においてはどのような点に注意すれば信義則に反しないのかについてまとめました。
信義誠実の原則(信義則)とは?
信義則は、信義誠実の原則のことで、日本では民法によって定められています。
権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。
(日本民法第1条2項)
民法の記載だと少しわかりにくいのですが、「契約書などに詳細な記載がなくても、正確に誤解なく事実を伝える必要がある」と言うことです。
例えば、履歴書はこのように書かなければいけないという法律も企業による指示もありませんよね。
指定がなくても、嘘や偽り、相手に誤解を与えるような記述は避けて誠実に書きましょうということです。
履歴書の内容は信義則違反になりうる?実際の判例
履歴書は雇用契約において基本的な情報の確認を行う書類でもあるため、正確に書かなければいけません。
判例によっても履歴書は信義則に則って真実を申告しなければいけないとされています。
採用担当者は、履歴書や職務経歴書、面接での言動をもとに採用、不採用を判断します。
それらに嘘や隠し事があれば、正確な判断ができないため結果として企業が不利益を被る可能性もあるのです。
実際の判例では、履歴書、職務経歴書、言動に詐称があり、それらの嘘の実績を理由に給与の交渉がなされたことを詐欺に当たるとして企業側から損害賠償が求められた、と言うものがあります。
参考記事:経歴詐称を理由とする解雇事件
注意すべきは、信義則は履歴書などの紙の書類だけではなく、面接での言動においても求められるということです。
とっさに、誤解を与えてしまうような表現をしてしまうと、解雇でなくても、トラブルにつながる可能性は十分にあるのです。
履歴書で信義則に注意すべきポイント
履歴書で信義則に注意すべき点は、大きく学歴、職歴などの経歴部分と年齢や健康状態などのその他の部分の2つに分けることができます。
経歴詐称と言われるのは、主にこれらの学歴、職歴の部分を指すことが多いでしょう。
新卒であれば卒業証明書の提出が求められるでしょうが、転職であれば提出が不要なケースも多いため、企業としては簡単には確認できない点と言えます。
卒業した大学や大学院を偽るのも経歴詐称ですが、留年や浪人歴を隠すことも同様です。
また、職歴も前職が有名企業、大手企業であればそれだけでネームバリューがあることもあります。
だからと言って、偽りの情報を書くことは絶対に行ってはいけません。
年齢や健康状態についても、信義則が当てはまります。
年齢であれば、法律的に雇用ができないケースもあるでしょうし、定年退職制度の観点から年齢によっては採用を見送っていた、というケースもあります。
健康状態はプライベートなことにも感じますが、業務に支障が出ることが事前にわかっている、その可能性が高いのであればしっかりと申告する必要があるのです。
履歴書の内容は信義則に則って誠実に記載
履歴書は、採用、不採用、どのくらいの給与で契約するかなどの働く前だけに必要になる書類ではありません。
雇用契約において非常に重要な役目を担うので、民法において定められている信義誠実の原則に従って嘘なく申告しなければいけません。
履歴書や職務経歴書、面接での言動が信義則に違反している場合には、採用の取り消し、解雇の正当な理由にもなります。
また、経歴を偽ることで給与の交渉をした場合には、詐欺罪として訴えられたケースもあります。
経歴の詐称はリスクが非常に大きいのです。
また、嘘ではなくても誤解を与えるような表現を避ける必要もあります。
履歴書は、信義則に従って書かなければいけませんが、例えば大学を中退した理由などは基本的に書かなくても問題ありません。
もちろん、面接の中で理由を聞かれる可能性はありますが、書くべきか、書かないべきか迷う点があれば転職エージェントや履歴書の添削サービスを使うのが良いでしょう。